城は踊る【乱立する戦国エンターテインメント小説考】：戦国ネタブログ：SSブログ

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城は踊る【乱立する戦国エンターテインメント小説考】　[神子田久四郎信綱] [編集]

このブログで何冊も紹介していますが、最近は「のぼうの城」から始まった戦国エンターテインメント小説が数多く出版されています。今回御紹介するのは岩井三四二の「城は踊る」です。岩井氏は1958年生まれ。戦国エンターテインメント小説は若い作家さんが多い印象がある中での大ベテランによる小説です。ベテランならではの戦国時代を描いてくれているのでしょうか？

小説の舞台は上総国の北条と里見の境界線の城、榎沼城が舞台です。「蛇衆」は九州、「哄う合戦屋」は信濃を舞台としており、どうも小領主が乱立していて大名の間に挟まれていく国が舞台になる傾向があるようです。

合せて舞台となる時期を小説の中に出てくる状況から分析します。このブログでも紹介した国府台城が舞台となった第一次国府台合戦(1538年)に主人公の神子田久四郎が初陣をしていて現在30才を過ぎているというから数十年後と推定されます。また、北条綱成が玉縄城主の時代でかつ川越夜戦の数年後で現在綱成が平井城攻めに出陣しているとのこと。1551年に平井城は落城していることから1550年前後と推定するのですが、里見の当主は義堯が佐貫城にいるという記述が出てきます。佐貫城は1563年頃まで北条里見で取った取られたの戦いがされていたようなのです。調べてみますと1550年前後は佐貫城は北条の支配下におかれているようですので、fuzzyの分析が甘いのか、岩井氏の設定が甘かったのか。。

さて小説の始まりは北条配下の榎沼城の武田左近将監が平井城(小説には詳細として出てきませんが関東管領上杉憲政の城)攻めに出陣したのはよかったのですが、伏兵にあって討死したところから始まります。
上総の武田といえば、上総武田氏というのが実在していたんですね。武田氏は甲斐本家が有名ですが、安芸武田氏や若狭武田氏等いくつかに分かれています。上総武田氏は武田信玄のひいひいひいひいおじいちゃんからの分家なんです。そういった意味でfizzyの好きな「いかに戦国時代の時代背景のリアリティを持ち込んでいるか？」という点ではかな～りレベルの高い小説だと思います。

武田左近将監の討死にを知った里見側配下の青山信濃守は榎沼城を攻めます。で、その配下の神子田久四郎とそのバラエティに富んだ部下達が攻める側の登場人物。榎沼城側は公家出身の武田左近将監の奥さんと親族と老臣達＋北条綱成から派遣された軍配者の柿沢玄信。そして側室もいます。なにやら内輪もめが起きそうな登場人物。。守兵は250、攻城側は1000。攻め側は超有利ですが、榎沼城は北条の援軍が来るまで持ちこたえようとします。

超人的は能力を持つ武将がいるわけでもなく、歴史好きが安心して読める内容になっています。かなり満足度の高い内容です。じりじりと攻め立てる青山信濃守。しかし、兵の損失も多く、和議を持ちかけます。

ここからなんだよな。。。

なぜ「アッ」という展開も求めなきゃいけないんですかねぇ。。。

ここからドタバタのスピード感溢れる(失笑)展開となります。話の辻褄はあっているので大きな疑問はないのですが、一挙に「歴史好きの本」から「売れる本」へと売れるマーケティング要素を含めた小説になってしまってるんですね。。う～ん、歴史好きとしてはレベルが高かっただけにちょっと残念。。

でも、もう一度読み返してしまいます。そういう要素を含んだ小説です。

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