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小太郎の左腕【最近の戦国時代小説の傾向】 [林半右衛門]

あ~、完全に風邪をひいてしまいました。。急に寒くなってきましたので、皆さんも気をつけてくださいね。

さて、今日は和田竜の3作目「小太郎の左腕」を御紹介します。
一作目の「のぼうの城」は史実に基づいた忍城の攻防戦、二作目の「忍びの国」は伊賀の忍者と織田信雄の戦いという実在した人物を使ったフィクション、そして3作目の「小太郎の左腕」は、、、とうとう完全フィクションに挑戦しています。

江戸時代の時代小説のフィクション物は数多くありますが、戦国時代の完全フィクションものは非常に少なく、大物の歴史小説家もほとんど書いていなくあっても忍者モノではないでしょうか?戦国大名(武将?)同士の争いを実在しない人物だけで作り上げていくのはなかなかのチャレンジだと思います。

書評として、「よくまとまっている内容」であるとか、「和田竜特有のさわやかな内容になっている」とかは他の書評をされている方にお任せして、「戦国ネタブログ」ではこの小説の時代設定について分析していきましょう。

「小太郎の左腕」の時代設定は1556年(弘治2年)です。この年は斉藤道三が息子の義龍に負けた長良川の戦いがあった年です。前年には厳島の戦い、そして桶狭間の戦いの4年前になります。この小説では鉄砲が重要な役割を果たすのですが、まだまだ群雄割拠で鉄砲が本格的な集団戦法として使われていないこの年を時代設定としたのは成功だったと思います。

次に動員兵力。戸沢家と児玉家の争いが小説の軸として展開しますが、最初の戦いは戸沢家2800、児玉家5000の戦いです。桶狭間の戦い時の織田信長の動員兵力が2000。厳島の戦い時の毛利元就の動員兵力4000とするとイメージ的に中規模よりやや小さいくらいの戦国大名が設定となっています。あまり大きすぎると個別の武将の活躍が目立たなくなってしまいますし、小さすぎると何ヶ月も籠城できる堅牢な城を持っているか疑問がでてきますのでまぁ、バランスが取れているのではないのでしょうか?

ちなみにこの戦いで戸沢軍は児玉軍の釣り野伏せにひっかかってしまい敗退します。主人公の小太郎の祖父要蔵がこの戦いを見ていて「釣り野伏せにかかりおった」とつぶやきます。「釣り野伏せ」ということばがいつから使われているかわかりますが、この戦法を用いた島津家が釣り野伏せを初めてつかったのが、1572年(元亀2年)の木崎原の戦いとされていますので、ちょっ~とフライング気味かな~って感じです。戦法としては昔からあったと思うんですけどね。

合戦、籠城戦、忍者、家臣間の確執と盛りだくさんの内容になっており小説自体はレベルが高いのですが、後半はさすがにさわやかすぎるかな~という感じです。また、主人公は小太郎という少年ですが、話は戸沢家の勇将の林半右衛門を中心に展開しています。このアムロとシャアのようなW主人公スタイルは狙ったものなんですかね?

実はもう一つフィクションの歴史小説が同じタイミングで出版されており、fuzzyはそっちの方が好きかな?次回御紹介しますね。

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ノリパ

なんか読んでみたくなりました。釣り野伏せって、知らない言葉です。
いろいろ惹かれます。勉強になります。
by ノリパ (2009-12-20 17:09) 

fuzzy

釣り野伏せは島津の得意技です。大友、竜造寺が衰退に追い込まれたのはこの戦法にひっかかって大敗したからです。何度もひっかかるのはそれだけ島津のやり方が上手だったんでしょうねぇ。
by fuzzy (2009-12-21 00:24) 

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